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T's STUDIO:FROM USA

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2023年WBCメディカルリエゾンサポート報告/武藤卓也 ATC

「2023 World Baseball Classic(読売新聞主催」にトライ・ワークスのアスレティックトレーナーがメディカルリエゾンとしてサポートしました。メディカルリエゾンの業務はどのようなものなのか、実際にサポートに当たった武藤卓也トレーナーにお話を伺いました。

写真 2017年以来、7年ぶりの開催となった2023 World Baseball Classic。
メディカルリエゾンというポジションでこれまでトライ・ワークが携わってきた国際大会と今大会のWBCでは大きな変化がありました。
これまでは来日した各国、又は各チームに24時間張り付き、傷病発生等緊急時に選手または関係者、選手家族が日本国内で病院受診が必要となった際の付き添い、チーム側医療関係者と受診先病院との仲介や通訳業務がメインの仕事とされていました。普段はチーム側医療関係者やアスレティックトレーナーと連携し手伝い、医薬品やトレーニング備品の日本での手配などを行い、チームを側面からサポートする役割を担ってきました。
今大会から各国、又は各チームに24時間張り付くという体制から、球場に配置されるといった体制を取るようになり、球場で行われる試合や練習、外部室内練習場での練習時の緊急時対応、そのサポート、また事前のエマージェンシーアクションプラン (EAP: Emergency Action Plan)の策定などがメインの業務となり、医薬品の手配、選手の医療機関受診のサポートなどの業務は以前と変わらず大事な仕事の一つとなりました。

写真 今大会、東京ドームでの第一次ラウンドと準々決勝では幸いにも重症な傷病者はいませんでしたが、WBC開催前に京セラドームで行われた強化試合では、試合中のアクシデントにより翌日に病院受診を希望された選手がいました。その際、受診予約から始まり、会計までのサポートをし、チームトレーナーの要望に応え、スムーズに終えることが出来ました。多少の緊急対応ではありましたが、読売新聞社の関係者や後方支援病院と連携を取り、迅速に対応できたことは良かったです。宮崎の方でも歯が痛いとのことで病院受診をされた選手がおり、スポーツの現場内・外で様々なことが起こるということを改めて感じました。

テーピングや医薬品の手配業務もあり、大阪入りした日にはテーピングの受け取りに行ってほしいという連絡を急遽受け、日本チーム、韓国チームへ配布。 東京ドームではMLB側からの医薬品手配で多少のトラブルがあり、急遽、薬局へ市販薬の買い出しが必要となり、服用の量や方法を英語で説明するということもありました。その他、試合会場に設置されたワールプール(ジャグジー、ジェットバスのようなもの)やヒートパックの設置に立ち会い、機器の取り扱い方法の説明を受け、その説明を後々、各国のチームトレーナーへ英語で説明する業務もありました。

写真第一次ラウンド開催前夜には各国のメディカルスタッフが一同にグラウンドに集まり、EAP(エマージェンシーアクションプラン)に関してメディカルミーティングを行いました。EAPとは安全で安心な環境を提供するべく、生命に危険が及ぶ可能性がある事態(怪我や事故)を事前に想定し、計画を立て、それに沿ってシミュレーションを1度行って検証された緊急時対応計画のことです。球場待機の救急車、ゴルフカート、ストレッチャー、車椅子など設備の確認から、どういった手順で選手をグラウンドから安全かつ迅速に運び出すのかを確認いたしました。幸いにも今大会中にEAPを稼働させることはありませんでしたが、チームトレーナー、ドクター、メディカルリエゾン、救命救急士、病院スタッフが緊急時に誰が何をするべきかを明確にしておくことでいついかなる時でも迅速に対応することができる体制を整えておくことはスポーツ現場においてとても大切な準備だと感じております。

大阪での強化試合から始まり、あっという間の2週間でしたが、アスレティックトレーナーとしてではなく、メディカルリエゾンという普段とは異なるポジションで国際大会に携わらせていただき、とても貴重な経験となりました。

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